プラスチック材料特性と耐薬品性について

PET樹脂

PET樹脂の精製方法ですが、PET樹脂は、テレフタル酸とエチレングリコールを原料とし、化学反応させると、水(H2O) を脱離しPET樹脂が出来ます。この反応を“重縮合反応”といいます。
これとは反対に、PET樹脂にエネルギーを加えて水を与えると、ものとテレフタル酸とエチレングリコールに戻ります。
この反応を加水分解と言います。

PET樹脂は酸性物質やアルカリ性物質によって、加水分解することで、劣化すると考えられます。

なぜPET樹脂は、酸性やアルカリ性に弱いのか
PET樹脂に酸性物質が接触し、何らかのエネルギーが加わると酸性物質からH+(水素イオン)が放出され、加水分解の反応が始まります。

H+がPET樹脂の O と CH2 間の結合を切って O と結合し、もとのテレフタル酸とエチレングリコールに戻ります。 同じく、PET樹脂にアルカリ性物質が接触し、何らかのエネルギーが加わると、アルカリ性物質が他からH+(水素イオン)を引き寄せ、 酸性物質同様に上記反応を起こし加水分解します。
従って、PET樹脂は酸性物質やアルカリ性物質によって加水分解するので、劣化すると考えられます。

PE樹脂

ポリエチレンの構造は以下の通りです。

溶解・亀裂までのメカニズム

PE成形品に、成形時に発生したウェルド部分やヒケ、ボイドなどの残留応力や外力が負荷されると、分子鎖間の分子間力が失われ、アルコールなどの薬品が分子鎖間に入り込み、膨潤現象が起こります。(膨潤は化学反応ではありません)

PP樹脂

ポリプロピレンの構造は以下の通りです。

実際は下図のように螺旋構造の分子構造のため、ヒンジ特性がありワンタッチキャップ等の樹脂として使われています。

しかしPPには以下のような欠点があります。
・紫外線で酸素と反応して酸化されやすい
下図の様に、紫外線のエネルギーが加えられると、空気中の酸素(O2)がPP分子鎖と反応(酸化)して、分子鎖の結合を切ってしまい劣化します。
これを「耐候性・対酸化劣化生不良」と言います。

低温(0℃以下)になると柔軟性を失い脆く壊れやすくなる
PPのガラス転移点は「0℃」です。樹脂は、ガラス転移点より低くなるとガラスのように柔軟性を失い脆くなります。PP容器が低温で落下強度が極端に低下するのは、このためです。
PP樹脂の弱点(耐候性・耐酸化劣化性不良、低温特性不良等)を補うために、下記の添加剤が入れられています。
UV吸収剤:紫外線のエネルギーを自らの中に取りこんで化学的に処理する物質
抗酸化剤:物質の酸化を抑制する目的で加える物質
界面活性剤:分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、油になじみやすい部分(親油基・疎水基)を持つ物質の総称。

プラスチックの耐薬品性について

PEやPPなどを膨潤劣化させる薬品には分子の形に特徴があります。丸い形の分子をもつ薬品はその形状によりPEやPPなどの分子鎖の隙間に入り込みやすく、その結果としてプラスチック自体を膨潤劣化させます。
さらにPEやPPの分子構造の一部によく似た分子構造をもった薬品はより入り込みやすくなるため、プラスチックの劣化を促進させます。

<丸い形の分子をもつ薬品例>
■エタノール
エタノールは化粧水やヘアトニック等に多く使用されていて、代表的なアルコールの一つです。
アルコールとはアルキル基(炭素と水素で出来ているもの)にヒドロキシ基(-O-H)が結合した化合物の総称を言います。
このアルキル基は油の主要素であり、ヒドロキシ基は水(H2O)の一部であることから、エタノールは多くの油や水によく溶ける性質があります。
加えて、丸い形や揮発性(液体が気体に変わること)である性質から、何らかのエネルギー(熱、光、外からの力など)が加わると、PEやPPの分子鎖の隙間に入り込んで膨潤劣化されることがあります。

PEやPPの分子構造の一部に良く似た分子構造をもつ薬品例

■リモネン
リモネンは柑橘類の果皮に多く含まれ、その香りを構成する物質の一つであり、洗剤や化粧品に幅広く使われています。
リモネンの分子構造は、PS(ポリスチレン)の分子構造によく似ているため、PSを溶かし劣化させます。
スチレンとアクリロニトリルを重合させたAS(スチレン・アクリロニトリル・コポリマー)も同様に溶解されますので注意が必要となります。

■界面活性剤
界面活性剤は洗剤や様々な化粧品に含まれています。この界面活性剤とは分子内に水になじみやすい部分(親水基)と、
油になじみやすい部分(親油基・疏水基)をもつ物質の総称を言います。
その中でも石鹸やシャンプーの洗浄成分であるとともに、乳化剤としても用いられるステアリン酸ナトリウムとオレイン酸ナトリウムも
分子構造がPEと似た構造をもっているためにPEの中に入り込みやすく、膨潤劣化させることがあります。
但し、膨潤が起こるためには、長時間の応力付加等なんらかのエネルギーが与えられることが必要でエネルギーが付与されると
PE分子鎖間の分子間力が減少し、界面活性剤が入り込みやすくなります。